トーキョーコンサーツ・ラボ 一柳慧追悼コンサート


イベント詳細


野平一郎 (1953- ):《Si-Mi》—クラリネットとピアノための (2016)
 本コンサートの2つめのアンサンブル作品となる野平一郎氏の《Si-Mi》は、氏のパリ国立高等音楽院在学時代の師であったアンリエット・ピュイグ=ロジェの追悼コンサートのために委嘱された作品です。ピュイグ=ロジェ女史は1979年より、東京藝術大学にて12年に渡り教鞭を執った経験のある名教師でした。
 「Si-Mi」という独特なタイトルは、アンリエット(Henriette)の最初の2文字H(シ)とE(ミ)に由来しており、その音楽そのものもこの2つの音を中心として構成されています。2つの楽器は互いに多彩な特殊奏法に彩られていますが、その全編を覆うのはピアノの第3ペダルによる幻想的な共鳴です。作品の末尾の「葬送の雰囲気の中で、過ぎ去った過去とともに」と記された部分では、J. S. バッハの「マタイ受難曲」のコラールが引用されており、氏への強い追悼の意識が刻まれています。いま、この思いは一柳慧氏へと向けられていると言ってよいでしょう。